2026年10月8日、静岡県で、行政書士の資格を持たずに申請書類を作成した疑いで男性が逮捕されたと報じられました。今回の対象は特殊車両の通行許可で、車庫証明や自動車登録の事件ではありません。[3]
しかし、自動車等の販売では、車庫証明や名義変更の書類をお客様に代わって用意する場面があります。書類の作成料を無料としている場合や、提出済みの車庫証明申請書に車台番号などを書き足すなどの場合は、行政書士法との関係でどう考えればよいのでしょうか。
今回は、逮捕報道の内容を確認したうえで、日本行政書士会連合会などの公表資料をもとに、販売店様の書類作成について改めて整理しました。
10月8日の逮捕報道について
テレビ静岡によると、清水警察署は10月8日、行政書士法違反の疑いで沼津市の男性を逮捕しました。法人の依頼を受け、資格がないまま特殊車両の通行許可に関する申請書類を作成した疑いと報じられています。[3]
ここで押さえておきたいのは、容疑となった書類作成が2024年11月頃の行為だという点です。逮捕されたのは改正法の施行後ですが、書類が作成されたとされる時期は施行前です。今回の事件を「今年の改正によって初めて違法になった事例」として紹介するのは正確ではありません。書類作成に関する業務制限は、改正前から設けられていました。
対象の手続きも、車庫証明や自動車登録ではなく、特殊車両の通行許可です。また、逮捕報道の段階であり、現時点で有罪が確定したわけではありません。
もちろん、事件そのものについて報道から分かることには、限りがあります。ただ、資格のない人が業務として申請書類を作成することへの制限は、以前からあったという点は、自動車の手続きでも共通します。改正後の対応を考える際も、ここを出発点にする必要があります。
「書類作成は無料です」で済むのか
行政書士法第19条第1項は、行政書士・行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として対象となる書類を作成することを制限しています。他の法律に別段の定めがある場合などの例外はありますが、お客様の申請書を事業として作成する際には、この規定が関わります。[1]
2026年1月1日の改正で加わったのは、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言です。日本行政書士会連合会(日行連)は、商品代金や手数料などの名目で対価を受け取る場合も対象となる、従来の解釈を明確にしたものと説明しています。[2]
例えば、車両の見積書では書類作成料を0円とし、別の欄で登録代行手数料を請求する場合。販売店側が「いただくのは窓口へ行く費用だけです」と説明していても、それだけで書類作成が無償と判断されるわけではありません。実際に担当している作業や、契約の内容まで含めて見られます。
日行連が7月29日に公開した資料では、自社で販売した車両の申請書を無料で作成する場合について、車両代金や整備代金等に報酬が含まれると考えられるため、行政書士法違反に当たると考えられるとの見解を示しています。車庫証明と自動車登録の双方について挙げられた例です。[4]
この資料を読むと、見積書から書類作成料の欄を消すだけでは、見直しとして足りないことが分かります。請求する項目を変えても、店舗で申請書を作っている事実は変わらないためです。
人件費まで含めた「実費」には注意が必要です
実費という言葉も、少し丁寧に扱いたいところです。印紙・証紙代や用紙代を、その範囲で精算する場合と、担当者が作業する人件費まで含めて受け取る場合とでは、同じ扱いにはなりません。国土交通省の掲載資料でも、この点は区別されています。[5]
例えば「書類は無料で作成し、登録に行くスタッフの人件費を実費として請求する」という進め方です。同資料では、このように人件費等を含む費用を受け取る事例について、実質的に申請書作成の報酬が含まれるとしています。書類を作る時間が短い、請求額の大半が別の作業の費用である、といった事情だけでも解決しません。
一方、個別の判断では、契約内容、作業全体における書類作成の重要性、受け取った金額なども考慮されます。すべての「無料」や「実費」を一括りにするのではなく、どの作業に対して、何の費用を受け取っているかを見る必要があります。[5]
店舗で見直す際は、普段使っている見積書と申請書を、一緒に確認してみてください。営業担当者がお客様へ説明している内容と、事務担当者が実際に入力している内容が分かれば、外部へ依頼すべき作業も具体的になります。書類作成料という言葉があるかどうかを探すだけでは、見落としてしまう部分です。
今回の改正では、業務制限違反に関する両罰規定も整備されました。違反した本人には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められ、法人等の業務に関して行われた場合は、法人等にも100万円以下の罰金が科されることがあります。書類担当者だけに判断を任せず、店舗として作成の分担を決めておくべき理由の一つです。[1]
車台番号を書き足す、その作業も作成に含まれます
申請書を最初から作る場面だけでなく、提出した後にも気をつけたい作業があります。車台番号の追記や、窓口で指摘された箇所の訂正です。
日行連の資料は、販売員が車庫証明の申請書等を提出した後に車台番号を追記したり、記載を訂正・補正したりする行為も取り上げています。警察署の職員から求められた場合も、違反になると考えられるとの見解です。自動車登録についても、提出後の記載の追加・修正が挙げられています。[4]
例えば、新車の車台番号が後から分かり、申請書の空欄へ番号を書き足しに行く場面です。担当者としては、新しい申請書を作ったわけではなく、分かった番号を記入しただけという感覚かもしれません。それでも、この追記は資料に明示されています。
窓口で住所の記載を指摘されたときも同じです。目の前で一か所直せば受け付けてもらえるなら、その場で済ませたい。書類を持ち帰れば、再訪問の手間もかかります。しかし、窓口で訂正を求められたことと、持参した人が訂正してよいことは別の話です。
本文中の場面は、説明のために挙げた例です。日行連の見解を紹介していますが、個別の違法性は、報酬関係や例外規定など、実際の事情に基づいて判断されます。
提出だけを頼まれた場合と、委任状のこと
ここまでの説明で、「販売店では書類を窓口へ持っていくこともできないのか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。この点は、書類を作成することと、完成した書類を提出することは、分けて考える必要があります。
国土交通省の事例集には、お客様が自分で申請書を作成し、販売会社は書類の収集や提出を代行するケースが載っています。販売会社が申請書だけでなく、添付書類やその収集に関する書類も作成していないのであれば、その代行に対する報酬は、書類作成の報酬には当たらないとされています。[5]
ただし、完成した書類を持参するつもりでも、窓口で空欄を埋めたり、記載を直したりすれば、作成を伴うことになります。
なお、お客様ご本人が、ご自身の申請書を作ることは、当然ですが禁止されていません。[1]
委任状は、業務制限をなくすものではありません
お客様から委任状をいただいている場合でも、それだけで有償の書類作成が認められるわけではありません。委任状で確かめるのは、誰が誰に、どの手続きを委ねるかということです。依頼を受けた人がその業務を行えるかどうかは、別に判断されます。[1]
また、日行連は、委任状自体も権利義務・事実証明に関する書類に当たるとの見解を示しています。申請書だけを外部へ依頼し、委任状は従来どおり店舗で完成させる、という分担でよいかも検討が必要です。[4]
販売管理システムやOSSを使う場合
顧客名や住所、車両情報を登録しておけば、ボタン一つで申請書が出力される。こうしたシステムを使っている場合も、書類作成の問題は残ります。
日行連は、自社の顧客情報・車両情報のデータベースを利用して申請書を作成する場合も、違反になると考えられる例に含めています。手書きか、パソコンで出力するかによって、作成の扱いが変わるわけではありません。[4]
販売店様が行政書士へ依頼する際に、車両情報や契約に関する基礎資料を共有いただくことは、書類作成を進めるうえで必要な作業です。ただ、その情報から官公署に提出する申請書を作り、内容を確定する工程まで、販売店側で済ませてよいと当然に考えることはできません。
なお、OSSなどの電子申請には、行政書士法上、一定の例外規定があります。総務省令で定める手続きについて、同省令で定める者が電磁的記録を作成する場合などです。[1]ただし、電子申請を使っているという理由だけで、例外規定を超えて、どの販売店でも自由に申請データを作成できるわけではありません。
書類作成からのご依頼について
行政書士に書類作成からご依頼いただく場合は、販売店様で申請書一式を完成させてから送っていただく必要はありません。車庫証明の場合には、車検証や自動車検査証記録事項、申請者・保管場所に関する資料など、作成のもとになる情報をご用意いただく形になります。
また、販売店様で作成した書類を、最後に行政書士が確認すれば、それまでの作成行為の問題も解消する、ということでもありません。静岡県行政書士会も、行政書士の監修があっても無資格者による作成が違法と判断される可能性を案内しています。[1]
最後に、あべ行政書士事務所では、埼玉県・東京都を中心に、車庫証明・自動車登録を承っております。ご依頼に関するお問い合わせは、メール・LINEで承っております。よろしければ、下記のリンクよりお問い合わせいただけますと幸いです。
あべ行政書士事務所
行政書士 阿部 孝之
参考資料・出典
- 静岡県行政書士会「令和8年1月1日施行 改正行政書士法に関するご案内」(2026年6月4日掲載)。法令原文:e-Gov法令検索「行政書士法」。
- 日行連「行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について」(2025年11月1日)。
- テレビ静岡/FNNプライムオンライン「行政書士の資格がないのに許可申請書類を代理作成したか」(2026年10月8日報道)。
- 日行連「自動車登録等の手続における行政書士法違反になるものと考えられる例について」(2026年7月29日公開、添付資料は2025年12月24日付)。
- 国土交通省掲載「行政書士法違反となる事例等」。
2026年10月10日時点で確認した資料に基づくご案内です。

